変換コネクタでGo!

最終更新:
2007-11-30
初出:
2005-02-04

今は昔、“レガシーフリー”ありけり

 あれは2000年頃だったでしょうかね? パソコン業界で『レガシー』とか『レガシーフリーPC』という単語が話題にのぼってたのは。

 この場合のレガシー(legacy)とは負の遺産を意味し、具体的には通信速度も遅くコネクタのカタチもバラバラな旧い周辺機器用のインターフェイス――シリアルポート(RS-232C)・パラレルポート(プリンタポート)・フロッピーディスクドライブ(FDD)・PS/2ポート(キーボードとマウス)――をパソコンから追放し、高速でコネクタも小さく扱いも簡単なUSBとIEEE1394(FireWireとかi.Linkと呼ばれるもの)に統合しようというもので、当時はNECのSimplemのように、USBとIEEE1394とPCカード以外の旧いインターフェイスを全て切り捨てた製品も出現しました。

 しかし……あれから数年経ったハズなのですが、どこ行ったんでしょうねぇ? レガシーフリーPCって。

 結局一部のノートパソコンを除けば、これら“時代遅れ”とされるインターフェイスは廃れることなく今も裏蓋にしっかり存在しています。特にNECに至っては、キューハチから転向して“PC98-NX”になった当初は基板上に存在していたPS/2ポートをわざわざ封印してUSBキーボード・マウス(もしく専用コードレス)しか使わせなかったハズなのに、いつの間にやらPS/2キーボード・マウスが標準装備のマシンが混在しはじめ、最近ではごく当たり前のようにPS/2ポートからキーボードとマウスが生えています。

 今思うと一体あれはなんのための封印だったのか? 邪推すると、それまでのキューハチ用のキーボード・マウスをムリヤリ付けようとして壊すユーザーが出てこないよう、コネクタのカタチを丸から四角にハッキリと変えることで互換性がないということを知らしめておきたかったとか?

 そしてパソコン本体の先祖がえりはともかく周辺機器業界は順調にレガシーを追放し、もはやパラレルポート接続のスキャナーもシリアルポート接続のペンタブレットも新品では存在しなくなりました(ウチには何故か両方ともあったりしますが)。

 しかしキーボードとマウスだけは例外で、現在でも大抵のマウスはPS/2マウスとして使えるようにUSB→PS/2変換コネクタを標準装備しているし、キーボードもPS/2モデルとUSBモデルが混在して市場に流れています。これは昔出回っていた質の高いキーボードを現在も使いたいというユーザーの欲求だけではなく、PC/AT互換機はBIOS書き換え等PS/2キーボードでないと使えない状況が未だにあるため(そうではないものもあるらしいが)、メーカー側はPS/2キーボードを挿せるようにしておかないとまずいのかもしれません。

 さて、ここから本題です。PS/2キーボードを愛用しているくせにうっかりしてUSB専用のマシンを買ってしまったユーザーは一体どうすればいいのでしょうか?


USB→PS/2変換コネクタ昔話

 当時安かったからという理由ですでに旧式となったNECのSimplemを買ってしまい、あとで周辺機器を接続する段になってからアタマ抱えたユーザーはけして筆者だけではないと思いたい。

 とにかく愛用のJusty(のちに倒産)製テンキーレス日本語89キーボード―JKB89S―を使えるようにしなければならないので、キーボードケーブルのPS/2端子をUSBとして使えるように変換するケーブルなりコネクタなりを探すことになりました。

 今は昔の話です。

 尚数年にまたがる出来事を一括して書いたので、すでに製品自体が売っていなかったり後継機種に引き継がれたりして、情報そのものはすでに過去のものだと思って下さい。何よりテストしているSimplemに搭載しているWindows98SEは再インストールするたびに微妙に振る舞いが異なる不安定なシロモノなので、ここに書いてあることを鵜呑みにはしない方が良いと思います。というかこれを読んでどういう結果になったところで筆者は関知しません。自己責任とやらでお願いします。

audio-technica ATC-USBPS2

 最初に試したのはオーディオテクニカ製のATC-USBPS2。現在はすでに生産終了。メーカーサイトによると希望小売価格は5000円。実際は4000円弱くらいで買ったような。

製品概要
本体にwake upボタンとキーボード・マウスの接続確認用の黄緑色LEDあり。
USBコネクタから本体までのケーブル長は概ね750ミリ。
本体サイズは概ね85ミリ×35ミリ×15ミリ。
本体とケーブルは透明な材質。
本体からPS/2コネクタまでのケーブル長は概ね120ミリと150ミリ。
途中で二又に分岐していてキーボード側が長い。
JKB89Sで使ってみて
Windows98SEでは全く問題はない。
超漢字3ではLEDが点滅するだけでPS/2マウスが動かなかった。

 当時はTRONユーザーでもあったので、USB切り替え機を介してWindowsマシンのSimplemと超漢字3マシンのLV13C(NECのノートパソコン)の二台でキーボード・マウスを共有する必要があったのですが、マウスは独立して二台操作できる方が好都合なので超漢字側にPS/2マウスを追加して使っていました。

 現在はWindows98SE単独になりましたが、とにもかくにもケーブルが長いです。短い分には市販のUSB延長ケーブルを継ぎ足せば済むのですから、もっと短くても良いと思うのですが。

corega USB KM

 audio-technica ATC-USBPS2の次に買ったのがコレガ製のUSB KM。サイトの直販価格では4305円。実売は4000円弱くらいだったような。現在は後継機のUSB KMSが出回っています。

 実はcoregaのと色違い(白)にしか見えなかったJusty製のモデルも試してみたことがあるのですが、使ってみるとUS101配列キーボードとして認識されてしまうので、メーカーに問い合わせたところ不備がある初期ロットだったとかで、セカンドロット以降らしきものに取り替えてもらいましたが、これも同じ症状だったので結局返金してもらい、代わりに買ったのがaudio-technica製というオチ。

製品概要
本体にwake upボタンとキーボード・マウスの接続確認用の黄緑色LEDあり。
USBコネクタから本体までのケーブル長は概ね250ミリ。
本体サイズは概ね90ミリ×45ミリ×25ミリ。
本体とケーブルの色は濃い目のグレー。
USBケーブル側はラウンドカット。
キーボード・マウス側のPS/2コネクタは本体に直差し。
PC99仕様にのっとりPS/2コネクタの色はキーボード側が紫でマウス側が緑。
JKB89Sで使ってみて
Windows98SEでも超漢字3でもキーボード・マウスの両方を認識した。

 今度は超漢字3でもマウスを認識したのでしばらく使ってみたところ、ある違和感が。キーボード操作で文字列を範囲指定するとき、途中で一旦停めて(勿論キーから指は離さない)範囲を確認してか方向キーで再度指定範囲を拡大・縮小しようとすると、カレットが移動した瞬間に範囲選択がキャンセルされて単なるカレットの移動になってしまいました。これはWindowsでも超漢字でも同じだったので、諦めて更に次を探すことにしました。

 JKB89Sとの相性なのかもしれませんが残念です。後継機種では直っていてほしいものです。

鳳祐FUX-PS2

 1500円くらいで購入。現在は全く別物の後継製品FUX-PS2/Bが出回っています。

製品概要
wake upボタンも確認用LEDもなし。
USBコネクタから本体までのケーブル長は概ね60ミリ。
本体サイズは概ね50ミリ×20ミリ×10ミリ。
本体の色は薄いアイボリー。
ケーブルは透明。
本体から二つのPS/2コネクタまでのケーブル長は概ね50ミリ。
PS/2コネクタにキーボード・マウスを区別するマーク類はなし。
JKB89Sで使ってみて
キーを押しっぱなしにしたときの反応が遅い。

 キーボードのプロパティで『表示までの待ち時間』を最短にしてあるのに、押してからカーソルが移動するまでに若干のタメというか、一旦後ろに下がってから駆け出すような感じで、audio-technicaやcoregaのものと比べると反応が遅く感じられ常用する気になれませんでした。

 強力なCPUパワーと最新のOSを搭載した現在のマシンならそんなことはないのでしょうか? 残念ながら値段は値段なりの内容しかないのだなという思いを強くしました

アーベルAU01-PS

 この手の変換コネクタというのはどうしてキーボードとマウスの両方を担いたがるのだろう? キーボードだけでいいのにと思っていたら出ていました。PS/2コネクタひとつをUSBに変換するケーブル。1500円くらいで購入。

製品概要
wake upボタンも確認用LEDもなし。
USBコネクタから本体までのケーブル長は概ね130ミリ。
本体サイズは概ね50ミリ×35ミリ×10ミリ。
本体・ケーブルの色は薄いアイボリー。
本体からPS/2コネクタまでのケーブル長は概ね120ミリ。
JKB89Sで使ってみて
キーを押しっぱなしにしたときの反応が遅い。

 やはりこれも常用にはできませんでした。

ダイヤテックFKB100

 1500円くらいで購入。現在は外見がほぼ同じらしい後継製品FKB110が出回っています。

 ブツは現在義弟が使っているので詳細は不明。

製品概要
wake upボタンも確認用LEDもなし。
本体・ケーブルの色は黒。
キーボード・マウス側のPS/2コネクタは本体に直差し。
PC99仕様にのっとりPS/2コネクタの色はキーボード側が紫でマウス側が緑。
JKB89Sで使ってみて
キーを押しっぱなしにしたときの反応が遅い。

 やはりこれも(以下略)。

すまいるSA-BAR2

 つい先日1500円くらいで購入。

 必要な回路をUSBコネクタに内蔵しているので、一見二股のPS/2ケーブルのように見える。

製品概要
wake upボタンも確認用LEDもなし。
USBコネクタが本体も兼ねている。
本体の色は濃いスモークがかった半透明。
ケーブルは透明。
USBコネクタから二本のPS/2コネクタまでのケーブル長は概ね100ミリ。
PC99仕様にのっとりPS/2コネクタの色はキーボード側が紫でマウス側が緑。
JKB89Sで使ってみて
キーの反応速度に遅れを感じない。

 過去の経験からいってこの価格帯のものには正直全く期待していませんでしたが、見事に覆されました。

 今現在もこれをつけてタイピングしていますが、キーの反応も速いし範囲を選択中に一旦停止しても選択範囲がキャンセルされません。どうも東プレのRealforce登場を機に何かが変わったのかもしれません。

 これを買ったことによる唯一の不幸は、予備用にと捜し求めていたaudio-technica製のを同じ日にもう一つ買ってしまったことでしょう。

瑣末的な注釈

LV13C
NECがキューハチからPC98-NXに転向したときの初代ノートパソコン。
デスクトップはPS/2ポートを封印していたがノートはPS/2ポートを装備していた。
最初から搭載されているくせにWindows95からは認識できないUSBポートは、超漢字からは認識して立派に使うことができた。
MMX-Pentium133MHzで静々と動いていたのどかな時代の産物。
Simplem
NECがレガシーフリーを前面に押し出し、旧来からのインターフェイスを全廃した意欲作。
基本コンポーネントノートパソコンからバッテリーを抜いてひらきにしたような体裁。
コンセプトはのちのG5iMacに採用された……と言えなくもないと思う。
Pentium3/500MHz/2.5"HDDなので、静音性だけは評価できるかもしれない。
PS/2マウスとして
USBポートに挿したときよりも変換コネクタを介してPS/2ポートに接続したときの方が反応が速いような気がする。
変換コネクタ
パラレルポート用プリンタをUSBプリンタとして使うための変換コネクタは存在する。
しかしパラレルポートに接続するタイプのスキャナも使えるとは限らない。
同様にシリアルポート接続用のモデムやTA(ターミナルアダプタ)をUSBで使える変換コネクタも存在する。
しかしシリアルタイプのペンタブレットも使えるとは限らない。
PC99仕様
インテルとマイクロソフトが提唱する望ましいPCのシステムデザインの仕様。
挿すべきコネクタが色で判別できるするようにしたユーザーインターフェイスはこのときに採用された。
マウスは緑。
キーボードは紫。
シリアルポートは青緑。
パラレルポートは臙脂色。
MIDI(ゲーム)ポートは黄色。
VGA(ディスプレイ)ポートは青。
もちろん全ポートの色を黒一色の硬派なメーカーは現在も存在する。
東プレのRealforce以後
それまでは業務用向けにOEM供給していた東プレがRealforceシリーズという静電容量型のキーボードを一般向けに販売するようになった。
キーのタッチ・耐久性・追従性に限っても歴史に残るであろう逸品のひとつ。
但しUSB→PS/2変換コネクタを介して使用するとものによっては動作条件がきびしいものもあったらしい。

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