東映マンガ祭り的『ナイトライダー対エアウルフ』 〜プロローグ〜

初出:
2000-02-08

「ちょっと待ってくれよ、デボン。ヘリってのは確か……」
「そう、マイケルでも知っているように普通のヘリコプターは音速では飛べん。どうしてか解るか?」
「……オレにも解るように説明してくれないか? キット」
「はい、マイケル。ヘリコプターというのは翼の代わりにローターが回転することで揚力を得ます。そのため機体が静止していてもローターの先端は常にそれ以上の速度で回転していますから、機体速度が音速の壁に達するはるか以前にローターの先端が」
「腕を振りながら歩いていると指先が一番冷たくなるようなもんかな?」
「そうかもしれません。ただしヘリコプターの場合音速を超えるときに発生する衝撃波で、ローターが破壊されてしまいます」
「だから世界中のヘリコプターメーカーはなんとかして次世代ヘリにマッハ1プラスを達成させようと躍起になって開発しているが、未だモノになったものはない。しかしモフェットという悪魔的な天才科学者はそれを可能にしたのだ」

「マッハ1プラスの超音速攻撃ヘリか……。そいつは一体どんな手を使ったんだろうな?」
「それはモフェットが死んだ今となっては解らん。量産計画もあったのだが、ラングレー(CIA)に提出した設計データには時限式のウィルスが仕掛けられていて、調べたときには消えていたという話だ。ただ原理としては双発のターボジェットエンジンを積んで、飛行速度に応じて動力伝達回路を切り替えるシンプルなやり方だと思われる。アイデア自体はありふれたものだが、超音速時のローター制御に独自のノウハウがあったということだろう。もっともモフェットみずから操縦した砂漠の極秘公開試験で、ヤツはコントロールタワーを襲ってそこにいたほぼ全員を死傷させたから、今となっては知る者はない。左右に四門あるヒューズ・チェーンガンと三連ロケットランチャーによる徹底的な破壊だったから、生存者がいたということ自体奇跡に近かった」
「なんとも物騒な男だったようだな、そのモフェットって。でも死んだのか?」
「コントロールタワーを破壊して機体ごと中東の某国に逃亡したのだが、奪回のため送り込まれた工作員によって、な……。しかしみごとに奪回したまでは良かったのだが」

「まだ続きがあるのか?」
「あろうことか今度はその工作員が帰還途中に機体ごと逃走し、いずこかに隠匿してしまったのだよ! ベトナムで消息を絶った兄を連れ戻すまでは返さないと言ってな」
「気持ちは解らないでもないが、困ったヤツだな」
「まったくだ。国民の税金で作った国家の財産だし、今となっては貴重なオリジナルだから返還するようにと、ラングレーが何度も交渉したのだが未だに進展はしていない。しかもそいつはひそかに私利私欲のために使っているらしいのだ。以前とある田舎町の警察署が何者かによって襲撃され、署員ごとふきとばされた事件があったが、これがどうもそうらしい。あとでそこの署長の悪事が明るみに出たとはいえ、告発・裁判を抜きにしてリンチを下すというのは、民主主義の我が国に於いて許されることではない。しかし強攻手段に訴えようにもなまなかの者では相手にもならんときている」

「そこで我がナイト財団のマイケルとキット様にその“エアウルフ”とやらを取り返してくれるようラングレーが泣き付いてきた、という訳だな? デボン」
「そういうことだ、マイケル。財団としてはラングレーからの依頼というのがあまり気に入らないが、そうはいっても国家の財産には違いないからな。外形から割り出した機体のデータをキットに送ったから、後で見ておいてくれ。こいつは武装だけでなく守りも強力だぞ。キットの高分子結合皮膜ほどではないといいのだがな」
「空飛ぶ狼との直接対決はごめんこうむりたいものだな、キット」
「まったくです、マイケル。地上で無敵の戦車も対戦車ヘリにはかないませんからね」
「それで、オレたちはこれからどうすればいい? デボン」
「とりあえずそのまま移動して元工作員と接触してみてくれ。亡き父親の親友だった男のところでヘリのパイロットをしている。『サンティーニ・エア』という小さなところだ」
「で、そいつの名は?」

「やぁ、ストリングフェロー・ホークさんかい? オレはマイケル・ナイト。ナイト財団から来た。マイケルと呼んでくれ。どうだい、オレとひとつ勝負しないか? 例の黒い鳥を賭けて――」

エピローグ >


『ナイトライダー』日本語版声優
マイケル・ナイト:ささきいさお
デボン・シャイアー・マイルズ:中村 正
キット(K.I.T.T):野島昭生

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