孝行娘

初出:
2006-12-07

おとっつぁん、起きて。おとっつぁんたら。

あたいよ、解る? ごはんができたわよ。

もう、おとっつぁんったら。それは言わない約束でしょ。

大丈夫? 起きられる? ごめんね、あたいのせいで本妻さんにばれちゃって。

でも本妻さんもひどいわよね、おとっつぁんがこんな身体になってから放り出すなんて。

だいじょうぶよ、たったひとりの大事な大事なおとっつぁんだもの。たとえあたいがカラダ売ったって、おとっつぁんを飢えさせたりなんてことはしないから、安心して。

さ、しめっぽい話はこれくらいにして、ごはんにしましょ。

今日の夕飯は……はい、おとっつぁんの大好きな、お・で・ん・よ。熱々の。

ほら、こんなによーく煮えてるでしょ? あたいが食べさせてあげるからね、おとっつぁん。

もう、慌てなくても大丈夫よ。誰も取らないから。

ほら、あーんして。おいしい? おとっつぁん?

そう、涙が出るほどおいしいの。よかったわ、おとっつぁん。

まだいっぱいあるからね。良いのよ、好きなだけ食べて。

長生きしてね。おとっつぁん。きっとよ……。


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