おとっつぁん、起きて。おとっつぁんたら。
あたいよ、解る? ごはんができたわよ。
もう、おとっつぁんったら。それは言わない約束でしょ。
大丈夫? 起きられる? ごめんね、あたいのせいで本妻さんにばれちゃって。
でも本妻さんもひどいわよね、おとっつぁんがこんな身体になってから放り出すなんて。
だいじょうぶよ、たったひとりの大事な大事なおとっつぁんだもの。たとえあたいがカラダ売ったって、おとっつぁんを飢えさせたりなんてことはしないから、安心して。
さ、しめっぽい話はこれくらいにして、ごはんにしましょ。
今日の夕飯は……はい、おとっつぁんの大好きな、お・で・ん・よ。熱々の。
ほら、こんなによーく煮えてるでしょ? あたいが食べさせてあげるからね、おとっつぁん。
もう、慌てなくても大丈夫よ。誰も取らないから。
ほら、あーんして。おいしい? おとっつぁん?
そう、涙が出るほどおいしいの。よかったわ、おとっつぁん。
まだいっぱいあるからね。良いのよ、好きなだけ食べて。
長生きしてね。おとっつぁん。きっとよ……。